1才2ヶ月になるM.ダックスのベティちゃんは、ヨダレが出て元気、食欲がないということで来院しました。
初診時、ぐったりしているにも関わらず異常興奮状態で、聞いてみると以前から理不尽な攻撃性が見られていたとのこと。レントゲンを撮ってみると明らかに正常より肝臓が小さく萎縮した小肝症を呈しています。血液検査では肝機能障害と吸収不良による低蛋白が認められます。
以上の所見から、先天的な奇形である門脈体循環シャントが強く疑われます。
本来腸管からの栄養をたっぷり含んだ血液は、門脈を経ていったん肝臓に集まり、ここから後大静脈を経て心臓に入ります。
しかし、この病気は門脈が直接後大静脈にはシャント(吻合)してしまうので、本来体には流れてはいけないアンモニアという毒性物質が体中に流れてしまうのです。血中のアンモニアの増加は、脳に悪影響をあたえて、意識障害や痙攣やヨダレ、異常興奮や攻撃性といった脳神経症状を起こします。
血管の造影検査を行い、血管の異常の位置を確かめて手術で異常血管を閉じてしまうことが根治治療になりますが、シャントの部位や動物の状態によっては手術は非常に難しいものになります。
ベティちゃんの場合は飼主さんとも相談した結果まず食事療法と投薬でコントロールしていくことになりました。肝臓用の処方食と、腸管内でアンモニアの生成を抑えるラクツロースシロップ、SAMeという肝臓用のサプリメント、抗生物質、セファランチンの内服に加え、強肝剤やビタミン剤、補液などの注射治療も併用した結果、初診から一週間目には肝臓の数値であるALTが993から278まで下がり、全身状態も随分良くなりました。これからも内科療法を続けつつ、手術をするかどうか慎重に検討していく必要があります。
|