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難病と戦う子達
獣医学の教科書には載っているけれど、実際診療現場で目にすることは少ない難病を抱えながらも頑張っている子達を紹介します。

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 1   フォークト―小柳―原田病
更新日時:
 
名前だけ見るとどんな病気だか見当もつかないでしょうが、免疫介在性ブドウ膜皮膚症候群とも呼ばれる自己免疫性疾患です。
 
秋田犬,サモエド,シベリアンハスキーにおいて稀に見られる病気です。最近は秋田犬やハスキー自体が少ないので実際目にすることはほとんどないかもしれませんね。
 
突然発症するブドウ膜炎(目の炎症)が主な症状です。同時に皮膚の色素の脱失がみられることもあります。教科書によく載っているのが、赤く腫れた目をまぶしそうにシバシバさせている秋田犬の写真です。
 
初診の時の御国(ミクニ)ちゃんの目もまさにその状態でした。(上の写真)
 
御国はまだ生後11ヶ月の純粋の秋田犬です。しばらく前から目やにがでてまぶしがり、他院に連れて行ったが段々悪化しているとのことで来院しました。
 
特徴的なその症状からすぐに免疫抑制剤と抗生物質による治療を開始しました。
 
この病気は初期に積極的で迅速な免疫抑制療法を行わないと網膜や脈絡膜が致命的なダメージを受け失明することもあります。薬を止めると悪化する為非常に厄介な病気です。
 
御国ちゃんの場合もいい状態を保つ為には、1日おきの内服薬と日光禁止、土掘り禁止など、日常生活にも制限が必要不可欠・・・先は長いけど頑張ろうね!

 2   下垂体性副腎皮質機能亢進症
更新日時:
 
8才のメスのシーズー、パールちゃんの多飲多尿に飼主さんが気づき来院したのは半年ほど前のことです。その時点の血液検査ではALPが正常より高値を示していましたが、血糖値は異常といえるほどの値ではなく、発情後で乳腺が張っていたことから卵巣・子宮疾患を疑い抗生物質等で治療を行い良好に経過していました。
 
昨年11月末、再度多飲多尿となり、血液検査をしてみると血糖値が498(正常では60〜110)、ALPは2372とかなり高値を示していました。糖尿病を疑いインスリン投与を開始しましたが、インスリンにほとんど反応しないことから、次の段階として副腎皮質機能亢進症(クッシング病)を疑い、低容量デキサメサゾン試験を実施したところ、下垂体性副腎皮質機能亢進症であることが判明しました。
 
これは簡単に言えば脳の下垂体と言うところに腫瘍ができ、そこから副腎に異常に刺激が送られる為コルチゾルの過剰が生じている状態です。
 
多尿多飲・下垂した腹部・肝臓肥大・体毛喪失・元気消沈・筋虚弱などの症状が起こります。
 
パールちゃんの場合は、多飲多尿とむくみが目立つものの、毛が薄くなったりする症状はありませんでした。
 
腫瘍が出来ているところが脳ですから、手術は現実的ではなく、一般的なミトタンという薬は重大な副作用の問題と価格が高く飼主さんの負担も大きいことから、より優しいケトコナゾールという薬で副腎の亢進を押さえる治療が開始されました。
 
治療を開始して2ヶ月経ちますが、相変わらず多飲多尿はあるものの、むくみはとれ元気・食欲ともに旺盛です。
 

 3   膵外分泌不全
更新日時:
 
14才になるシーズーのパックン、最近食べても食べても痩せてきて黄色いウンチをするということで来院しました。血液検査をしてみても糖尿もないし、肝機能・腎機能も正常範囲です。そこでもうひとつ、膵臓から分泌される血中のトリプシン濃度を測るTLIという検査をしてみたところ・・・(右写真)
 
本来なら“Clear Guide”のrの文字の下に出てくるべきラインが一向に現われてきません。ということは、血中のトリプシン濃度が正常以下しかないということを意味します。
 
膵臓の萎縮や慢性肝炎などの影響で、膵臓から消化を行うのに十分な酵素が分泌されないために起こる膵外分泌不全と言う病気です。そのために消化不良をおこし、太れないのです。
 
出なくなった酵素は内服で補う以外に方法が無いので、毎食食事に消化酵素を混ぜて与えます。食事自体も低脂肪で吸収の良い食事をこまめに与える必要があります。吸収不良により、皮膚の状態が悪化する子も多いのでビタミン類の補給も欠かすことはできません。
 
パックンも消化酵素と食事療法でウンチの状態が随分良くなり体重も増えてきています。当院にはパックンの他にもこの病気と闘っている子がいます。数年前から続く下痢で受診したポメラニアンのノビタくんは、もう2〜3年内服と食事療法を続けています。ぱっと見、普通のポメより毛も多いくらいで元気にしています。
 
 

 4   門脈体循環シャント
更新日時:
 
1才2ヶ月になるM.ダックスのベティちゃんは、ヨダレが出て元気、食欲がないということで来院しました。
 
初診時、ぐったりしているにも関わらず異常興奮状態で、聞いてみると以前から理不尽な攻撃性が見られていたとのこと。レントゲンを撮ってみると明らかに正常より肝臓が小さく萎縮した小肝症を呈しています。血液検査では肝機能障害と吸収不良による低蛋白が認められます。
 
以上の所見から、先天的な奇形である門脈体循環シャントが強く疑われます。
 
本来腸管からの栄養をたっぷり含んだ血液は、門脈を経ていったん肝臓に集まり、ここから後大静脈を経て心臓に入ります。
しかし、この病気は門脈が直接後大静脈にはシャント(吻合)してしまうので、本来体には流れてはいけないアンモニアという毒性物質が体中に流れてしまうのです。血中のアンモニアの増加は、脳に悪影響をあたえて、意識障害や痙攣やヨダレ、異常興奮や攻撃性といった脳神経症状を起こします。
 
血管の造影検査を行い、血管の異常の位置を確かめて手術で異常血管を閉じてしまうことが根治治療になりますが、シャントの部位や動物の状態によっては手術は非常に難しいものになります。
 
ベティちゃんの場合は飼主さんとも相談した結果まず食事療法と投薬でコントロールしていくことになりました。肝臓用の処方食と、腸管内でアンモニアの生成を抑えるラクツロースシロップ、SAMeという肝臓用のサプリメント、抗生物質、セファランチンの内服に加え、強肝剤やビタミン剤、補液などの注射治療も併用した結果、初診から一週間目には肝臓の数値であるALTが993から278まで下がり、全身状態も随分良くなりました。これからも内科療法を続けつつ、手術をするかどうか慎重に検討していく必要があります。

 5   尿崩症
更新日時:
 
トムちゃんは10才くらいのオスのシーズーです。数年前の夏から異常に水を欲しがりオシッコの量が半端じゃないと言うことで尿検査をしてみたら、重度の低比重尿でした。他の血液検査では特に問題がないので、試験的治療として抗利尿ホルモンを使ってみると尿の比重が上がり尿量もぐっと減りました。診断名は中枢性尿崩症。中年以降の犬で起こる場合は下垂体の腫瘍が最も多く、稀に原因不明のものもあります。
 
脳から分泌される“バソプレシン”という抗利尿ホルモンの不足で起こります。このホルモンが不足すると、腎臓での水分の再吸収が減少し、尿量が異常に多くなります。のどが渇き水も飲みたくります。
治療を施さないと,脱水のため意識混濁,昏睡および死に至ることもあります。
 
そこで用いられるのが、抗利尿ホルモンの一種であるバゾプレッシン。本来人では点鼻しますが、犬では目にスプレーして用います。腎臓での尿中水分の吸収を促進させ尿量を減らします。トムちゃんはかれこれ2年くらいこのスプレーをつかっているでしょうか。
現在は尿量も落ち着き、トリミングに来るくらいでほとんど病院知らず。でも彼を影で支えてるのは飼主さんの愛と小さなスプレーボトルなのです。
 
 


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